「ヒートショック」と「浴室熱中症」
ヒートショック? 医療関係者には違和感のある表現です。しかし広辞苑で「ショック」を検索すると、①急に加わる強い打撃。衝撃。 ②予期しないことに出会ったときの心の動揺。心理的衝撃。「―を受ける」 ③〔医〕急激な末梢血液循環の不全状態。血圧および体温の低下、意識障害等を来し、重症の場合、脳・心臓・腎臓などの機能障害をひき起こして死に至る。出血・外傷、細菌毒素の作用などが原因、とあります。つまり「ヒートショック」とは ①の意味でつかっており、実は建築・住宅用語であって、医学用語ではありません。急激な温度変化によって血圧が大きく上下し、心臓や血管に大きな負担がかかった状態をさします。
「入浴関連死」年間19000人
さて死亡統計からは「溺死」に分類された死亡数しかわかりませんが、 「厚生労働科学研究費補助金循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業 入浴関連事故の実態把握及び予防対策に関する研究 平成 24~25 年度総括研究報告書(研究代表者:堀進悟)」によると、入浴中急死の実数は死因が「溺死」 と記載された例の数倍に上ると推測されています。そこで、救急隊が入浴に関連した傷病と判断した患者で心肺停止に至った件数から「入浴関連死亡」を推計した結果が19000人ということになるのだそうです。この多くにヒートショックが関連しているのではないかと考えられてきました。
高齢者の「浴槽内溺死」は「交通事故死」より多い
高齢者の「浴槽内溺死数」をみますと、年間5000人前後、つまり「入浴関連死亡」のほとんどは脳卒中や心筋梗塞などの病気によるものであり、残りの4分の1が溺死ということになります。高齢の男性ほど多く、とくに冬場に多い、寒い体を温めようと、ゆっくり入浴してるのではないでしょうか?
「浴槽内溺死」の原因は「浴室熱中症」
ところで千葉科学大学危機管理学部の黒木尚長教授によれば、 42℃のお湯に10分間つかると体温が1℃上昇する。つまり30分後には体温が40℃を超える。すると意識障害や多臓器不全を来し、そのまま入浴を続けると細胞死➡高カリウム血症➡心室細動➡心臓突然死に至る。ましてや高齢者であれば、もともと動脈硬化のため脱水に陥りやすく、体温が38℃を超えた程度でももうろうとしてくる。 全身から力が抜けるような、ふわふわとした感覚がやってきて、気持ちよくて、うたたね… そのまま目が覚めず、心臓突然死➡溺死 となるかもしれない。
「気持ちいい」が要注意!風呂に10分以上入ってはいけない!
安全に入浴するための以下の点について確認しておきましょう。
- (1)入浴前に脱衣所や浴室を暖めましょう。
- (2)湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安にしましょう。
- (3)浴槽から急に立ち上がらないようにしましょう。
- (4)食後すぐの入浴や、飲酒後、医薬品服用後の入浴は避けましょう。
- (5)入浴する前に同居者に一声掛けて、意識してもらいましょう。
出典元:同上
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