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「老後ひとり難民」の時代にそなえる覚悟を

2024/10/14
[ 地域医療を考える ]

今年3月13日 NHKニュースに多くの人が衝撃を受けました。首都圏の人口10万人以上の自治体では、身元不明のため1年間に2万人以上の方が行政による火葬を行ったということでした。その年に亡くなった方のおよそ15人に1人になるのだそうです。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240313/k10014388981000.html

引取者のない死亡人10万人(2018.4~2021.10 総務省)

総務省によれば、身元不明のため「行旅法」により火葬を行った場合よりも、身元はわかっているが引取者がいないため「慕埋法」により火葬となった場合の方が4倍も多いのです。親子関係が悪化し疎遠になっていた場合、「一切かかわりたくない」と拒絶するケースがめずらしくないのだそうです。生活保護受給者の場合、家族がいても経済的な困窮のため引き取れないケースが多いようです。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000870883.pdf

2000年 介護保険は「面倒を見られる家族がいること」を前提につくられた➡家族の役割はだれもしてくれない

ケアマネージャーは、要介護認定を受けた方からの相談に応じ、ケアプランの作成やサービス利用の調整を行います。さらに定期的にモニタリングを行い、サービス利用が適切に提供されているか、利用者の状態に変化がないかなどを確認します。必要に応じてケアプランの見直しを行います。

しかし生活全般のマネジメントは含まれていません。掃除、洗濯、調理、買い物代行、通院送迎、 お金の管理や公共料金の支払い、ペットの世話、庭木の手入れ、 これらは家族の仕事です。そしてある時突然入院が必要になったとします。身元引受人がないと入院受け入れが困難になることがあります。また入院できたとしても、家にある入れ歯やパジャマをもってきてほしい、あれが食べたい、携帯電話もってきて、料金の支払いもお願い、入院費の支払いも、ケアマネの仕事ではないんですね。

入院して手術が必要とします。もし本人に意識がなかったら、あるいは認知機能が低下していたならば、だれが治療方針を判断するのでしょう?本人の意志とは異なる治療がされてしまうかもしれません。退院許可が出ても、介護が必要なため自宅に帰れないこともあります。介護施設への入所手続き、引越し、今まで家族が行っていたのです。

自宅で死亡することもあるでしょう。だれも見つけてくれなかったなら「孤立死」となり、遺体が腐敗してしまいます。そのようなリスクから、一人暮らしの高齢者には簡単に借家を貸しません。もし銀行が、口座名義人が亡くなったことを知らないでいたら、銀行口座からの引き落としは継続し、出金できなくなるまで休眠口座にはなりません。「死んだ後のことはどうでもいい」ではすまないのです。ピンピンコロリは思考停止としかいえません。

「身元保証等高齢者サポート事業」

国が動き出したのは、2016年 日本ライフ協会が経営破綻してからです。それでも国の動きは遅く、2021年高齢者の入居の際に「死後事務委任契約」を締結しておくための「モデル契約条項」が公表されました。また2024年3月 住宅セーフティネット法の改正案が閣議決定されました。4月には「高齢者等終身サポート事業者」ガイドラインが発表されました。https://www.cao.go.jp/kodoku_koritsu/torikumi/suishinhonbu/dai1/pdf/siryou4-2.pdf いまだ管轄は決まっていませんが、ようやく「身元保証サービス」「日常生活支援サービス」「死後事務サービス」のガイドラインが出され、事業者の質をある程度担保し、高齢者に不利益が出ないよう手だてが取られ始めた、そのスタートラインについたところです。もちろん罰則はありません。慎重に検討し、利用にはリスクを分散することが大切です。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000895783.pdf

「老後ひとり難民」リスクが高い人がすべきこと➡「血縁」より「結縁」

「今は夫婦二人だから安心だ」そんなことはありません、いずれひとりになります。また二人暮らしでも、高齢になると体力も認知機能も低下します、どちらかが入院とでもなれば、ひとりで対応できるでしょうか? 近くにこどもがいなかったら大変です。また未婚率もどんどん高くなっています。今元気なうちからすべきこと、

①個人の終活をはじめること ポイントは「自分に関する情報を整理する」「契約・依頼を明確にする」「自分がいなくても情報が伝わるようにしておく」ことだそうです。エンディングノートを利用するのも良いと思います。このような備えは防災と同じです、災害はいつやってくるかわからない、早めにやっておく。

②ACP(人生会議)に取り組むこと。後悔しない最期のための準備です。わからないことは、ケアマネ、かかりつけ医、専門職にご相談ください。https://www.niigata-min-sakaiwa.com/zakki/4407 https://www.niigata-min-sakaiwa.com/zakki/4682

③ご近所や地域社会とのつながりを大切にすること。サポートを受けるだけでなく、元気な方はボランティアとして参加しましょう。家族の代わりをすべて民間業者に依頼するのではなくて、みなさんの力でつくりあげ、地域で支え合うことが元気な老後への道となります。先進的な自治体に学んでも良いと思います。また専門的な分野については、民間業者にお願いすることもよいでしょう。

以上「老後ひとり難民」沢村香苗著から引用しました。

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