最近の外来で気づいたこと。 ＣＰＡＰ（経鼻的持続陽圧呼吸療法） の説明をしない日はないな～　そこで当院でＣＰＡＰ管理をしている患者さんをレセコンから抽出してみました。驚いたことに６４名もの患者さんが登録されており、ほとんどの患者さんが１～２か月おきに再来されますので、毎日どなたかが受診されていることになります。まずその中から典型的な患者さんをご紹介します（個人が特定されないように表現を変えてあります）

４０代　女性　身長１５５㎝　体重８０ｋｇ（ＢＭＩ　３３．３）
もともと不眠症で、前医からの処方は就寝前に５錠（ハルシオン２錠・レンドルミン１錠・デパス２錠）これだけ服用しても眠りが浅く、なんども目が覚めます。日中も頭痛、倦怠感のため元気が出ません。育児の疲労かと思っていました。簡易ＰＳＧ（ 睡眠ポリグラフ）検査の結果、午前３時、５時に酸素が５０％に低下していました（酸素は９０％以下が持続すると生命の危険があります）。無呼吸のために酸素が低下し目が覚めたのです。ＣＰＡＰを開始したところ、夜間に目が覚めることなく、起床時の頭痛もなく、日中の眠気もなくなりました。血圧も１５０→１２０　脈拍も１００→８０に改善しました。もちろん睡眠薬もわずか１錠（ロヒプノール１錠）に減らすことができました。

４０代　男性　身長１７６㎝　体重１００ｋｇ（ＢＭＩ　３２．３）
仕事が忙しくいつも疲れています。営業の仕事ですから連日のような飲み会で体重が増え、痛風発作を起こすたびに受診されます。血圧も１８０/１１０以上でいつ倒れても不思議ではありません。降圧剤を処方してもすぐ中断してしまいます。あるとき自分のいびきを録音して持ってこられました。本人も驚いたようで３０秒以上止まっている、息をしていない、死ぬんじゃないかと不安になったそうです。ＰＳＧでは夜間の酸素はおおむね６０-９０％の間、最低値は４４％でした。とても生きている人の数字とは思えない！１時間に７４回の呼吸停止は１分に１回以上ということになり、最長呼吸停止は１３０秒でした。恐怖感をおぼえ、すぐＣＰＡＰを開始してくれました。夜間息苦しくて目が覚めることがなくなり、日中のウトウトも、運転中の眠気もなくなりました。現在１時間当たりの無呼吸数は１．１回に減り、血圧は１２０に低下。しかし体重はまったく変わりません。以前より営業成績が上がったようです。

やせた人でも「睡眠時無呼吸」になる

さてＳＡＳ（睡眠時無呼吸）はどうしておこるのでしょう？ それは空気の通り道である上気道が狭くなることが原因です。首まわりの脂肪の沈着が多いと上気道は狭くなりやすく、肥満はＳＡＳと深く関係しています。扁桃肥大、舌が大きいことや、鼻炎・鼻中隔弯曲といった鼻の病気も原因となります。あごが後退していたり、あごが小さいこともＳＡＳの原因となり、肥満でなくてもＳＡＳになります。 やせているからと油断はできません。 https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=42

無呼吸の恐さは「夜間の酸素低下」

そして夜間に頻回に酸素が低下するたび、交感神経が興奮して脈拍が増え、血圧も下がりません。ＳＡＳのある患者さんは、高血圧の危険が２倍、脳卒中・心筋梗塞の危険が４倍高くなります。無呼吸数が２０回以上では、８年後には３７％の患者さんが死亡するというデータがあります。降圧剤を服用していても血圧が下がらない方、もしかしたらＳＡＳが隠れているかもしれません。

交通事故の頻度が７倍に！

またＳＡＳが注目されるようになったのは「交通事故」の誘因となるからです。一般ドライバーの２．５倍、ＳＡＳのない人に比べると７倍も交通事故を起こす頻度が高いのです。交通事故は、被害者にとっても加害者にとっても大変つらい結果を残します。どうか運転に従事される方は、一度はＰＳＧ検査を受けられますようお勧めします。

最期に当院で治療している６４人の患者さんのまとめをご紹介いたします。以下のリンクをごらんください。
https://www.niigata-min-sakaiwa.com/news/1557

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