坂井輪診療所

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あなたの不整脈 「心房細動」ではありませんか?

2020/3/21
[ 循環器の病気 ]

外来に心房細動の患者さんが受診されない日はありません。そこでレセコンから抗凝固剤服用患者さんを抽出しカルテを調べてみました。患者総数65名、当院のような一般内科医院では多い方かもしれません。おそらく「高齢化」の影響ではないかと思います。新潟市全体での高齢化率は28%ですが、当院のある西区寺尾東3丁目の高齢化率は36%と高く、女性にかぎると40%を超えているのです。さて心房細動はどうして治療しなくてはいけないのでしょう? 3人の患者さんをご紹介します (個人が特定されないように表現を変えてあります) 。

70代男性 3年前、特定健診に受診されました。聴診すると脈の乱れがある、どうもおかしい、心電図では心房細動でした。患者さんは全く自覚症状がなく、ゴルフとお酒が大好き。85歳までゴルフをやるんだと言っていました。専門病院を紹介し「抗凝固薬」が処方されました。血栓予防のために血液をさらさらにする薬です。しかし中断。2年前「薬は飲みたくない、自分の意志だ。あの日は徹夜でマージャンをしたからだ」と治療拒否。半年ほどして特定健診に再来。やはり心房細動が持続しており、足にむくみもありました。再三の説得に拒否。その3日後。お昼に友人と談話中、突然右片麻痺、失語症を発症。命はとりとめましたが、「脳塞栓」後遺症のため独居が継続できず施設入所となりました。

70代男性 3年前、特定健診に受診されました。心房細動あり専門病院紹介。この方も自覚症状がありませんでした。病気をしっかり理解され「抗凝固薬」をきちんと内服できていました。あるとき電気治療があることを知り、別の専門病院へ紹介となりました。アブレーションは成功し心房細動はでなくなりました。7か月後、主治医の指示により「抗凝固薬」が中止され大変喜んでおられました。そして9か月後、午前9時頃、トイレへ行こうと立ち上がった時に左手が動かない。入院時の心電図には心房細動はありませんでした。しかし精査の結果はやはり「脳塞栓」と診断され「抗凝固薬」再開となりました。幸い後遺症は軽く自宅で家族と暮らしています。

70代男性 心房細動の発症は60歳です、当時の詳細は不明です。6年後、不安定狭心症を発症し冠動脈にステント留置、抗血小板薬であるアスピリンが開始されました。と同時期に認知症が始まっていたのです。12年後、鼻出血が続くことがふえ貧血が進行。ワーファリンをイグザレルトに変更しました。13年後、大量鼻出血ありイグザレルト減量。鼻出血に対しては凝固止血治療を受け、その後はときどき鼻出血はあるが軽度。16年後、なにか様子がおかしい(本人は適切に訴えられず)、救急病院受診し右頭頂葉の脳梗塞による「左右失認」であることが判明。エリキュース高用量に変更となり、その後鼻出血は軽度であり、ときどき凝固止血治療を受けながら3年が経過しました。認知症はゆっくりと進行しているが、デイサービスを利用しながら自宅で妻と暮らしています。

心房細動を放置すると「脳塞栓」をきたし寝たきりになる

心房細動とは心房が痙攣したように不規則に震え、脈をとると不規則に速くなることが特徴です。だからといってすぐ命にかかわることはなく、また自覚症状もないと、なかなか治療の必要性を理解していただけません。しかしそのまま放置すると、心房内から血液がうまく送り出されなくなり、血液の「よどみ」が生じ、血栓(血液のかたまり)ができやすくなります。この血栓が血流にのって脳にまで運ばれ、脳の太い動脈を塞いでしまうと重度な脳梗塞(脳塞栓)をきたします。 それはあるとき突然、半身まひや言語障害などで起き上がれなくなり、治療がおくれると「寝たきり」になってしまいます。

「脳梗塞」には3種類ある―脳血栓、ラクナ梗塞、脳塞栓

ところで脳梗塞には3つの病型があります。むかしから「脳血栓」とよばれている病気は、動脈硬化でせまくなった血管内の血流が悪くなり、あるとき血小板血栓ができて徐々に詰まっていきます。ですから「あれっ?手が少ししびれるような?でもおさまってきたから大丈夫かな?」なんて思っているうちに徐々に症状が進んで麻痺がでてきます。また「かくれ脳梗塞」とよばれる病気は、動脈から枝分かれした細い動脈(細動脈)が壊死を起こして詰まってしまう病気です。ですからMRIで偶然見つかるような変化ですから、脳神経に影響のない部位であれば症状がありません。医学的には「ラクナ梗塞」といいます。それらに比べ「脳塞栓」というのは、正常な太い動脈の根元にいきなり心房内血栓が飛んできて詰まりますから、脳の広い範囲が壊死してしまうのです。

出典元:日本心臓財団
https://www.jhf.or.jp/topics/2018/000943/

「CHADS2スコア」2点でも、10年間で15%が脳塞栓

そこで心房細動による脳塞栓症の予防のためには、血液凝固因子を抑制して血栓をつくらせないことが治療の目標となります。しかし過度に抑制すると「出血」という副作用があります。そこで脳塞栓の「危険因子」を点数化し、1点以上の患者さんは治療した方がよいだろうという結論となりました。75歳以上で高血圧があった場合は2点となりますので、日本人だけのデータでも年間1.5%が脳塞栓発症、10年放置すると15%という計算になります。はじめに紹介した3例は、すべてCHADS2スコアが2点以上でした。

出典元: 2020 年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2020_Ono.pdf
出典元: 2020 年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2020_Ono.pdf

ワルファリンで脳塞栓の64%が予防できる

しかし抗凝固療法をうけることで、脳塞栓症が100%予防できるわけではありません。むかしからつかわれている「ワーファリン」のデータからは、64%の予防効果があるいうことです。ワーファリンによる出血に注意しながら、 定期的に凝固検査をする必要があります、 また「納豆を食べられない」など制限もあります、しかし脳塞栓の後遺症の大変さを考えるとできるかぎり予防治療を受けていただきたいと思います。また今はワーファリンと同等の効果があり、制限が少ないお薬がでてきました。当院の65人の患者さんがどのように治療を受けているか、以下のサイトにまとめました。ご覧ください。
https://www.niigata-min-sakaiwa.com/news/1615

主典元: 佐野内科ハートクリニック
http://heart-clinic.jp/%E5%BF%83%E6%88%BF%E7%B4%B0%E5%8B%95/
<フェイスブックご利用のみなさま>  以下のサイトからコメントいただけますとうれしいです。
https://www.facebook.com/tetsuo.adachi.9/posts/2922720004473623

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