喫煙歴は「新型コロナ肺炎」の最大の悪化因子 ~慢性閉塞性肺疾患 COPD29例のまとめ
慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病といえます。 https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=12
新型コロナ肺炎 喫煙群は14.3倍の増悪率
ところで武漢の「新型コロナ肺炎」3次病院入院症例における悪化群と改善・安定群を比較すると、最大の悪化因子は「喫煙歴」であり、危険率は非喫煙群の14.3倍でした。「60歳以上高齢者」の危険率8.5倍より高いのです。
COPD 新型コロナ肺炎致死率は6.3%
またCOPDをふくめた慢性呼吸器疾患患者さんの「新型コロナ肺炎」致死率は、持病のない方の6倍といわれています。 レセコンからCOPD治療のため吸入薬を処方されている患者さんを抽出しましたら、29名の患者さんが通院されており、25名の方が禁煙できていました。当院でのCOPD患者さんの実態をまとめてみました。
29人中28人が高齢者、4人が喫煙中
これまで当院でCOPDと診断された患者さんは、登録患者さんの数倍はおられます。しかし禁煙を勧められたくない、自覚症状がそれほど強くない、などの理由により治療を中断されます。したがって現在治療中の29名は日常生活に支障がある患者さんです。禁煙をおすすめしてもまだできていない方が4名おられます。圧倒的に男性が多く、1名をのぞく全員が65歳以上、75歳以上に限ると17名(59%)でした。
当院の外来患者さんは、ステージ1~2がほとんど
重症度は呼吸機能検査(スパイロメトリー)で診断し、重症化すると1秒間で吐ける呼気量が少なくなります。しかし必ずしも自覚症状とは相関しません。軽症例では、坂道や階段を上るとき、足の疲れより先に息が上がります。また進行すると平地でも息が切れやすく、いつのまにか歩行速度がゆっくりになり、同年代の人と歩いていても遅れてしまいます。さらに進行すると、家の中での布団の上げ下ろし程度でも息が切れるようになります。やがて肺の気腫化が進行し、酸素がとりこめなくなり、酸素吸入なしには日常生活ができなくなります。当院に通院している患者さんはステージ1~2が多く、重症例は専門病院へ紹介しています。
治療薬は、単剤3人、2剤20人、3剤6人
吸入薬は4種類ありますが、当院では3種類を使用しています。
①LABA:long-acting β-agonists(長時間作用性β2刺激薬)
②LAMA:long-acting muscarinic antagonist(長時間作用性抗コリン薬)
③ICS:inhaled corticosteroid(吸入ステロイド薬)
①と②は気管支拡張薬、③は抗炎症薬です。
ごく軽症の方には、② 単独のスピリーバ
症状の強い方には、①+② の合剤(アノーロ、スピオルト、ウルティブロ)
喘息と併発した方には、①+②+③ の合剤(テリルジー)を処方しています。
2剤合剤が圧倒的でしたが、喘息との併発例も多く3剤合剤が増えてきています。
COPDの「悪性サイクル」とは
さてCOPDが進行するどうなるのでしょう?家の中で動くだけでも息苦しくなると外出しなくなります。運動不足で食欲もなくなり栄養不足になります。知らずのうちに骨粗鬆症や筋力低下が進行し、転倒し骨折することもあります。ひととの交流が不足し気力が低下します。うつ状態になったり、認知機能が低下することもあります。
るいそうは、最大の増悪危険因子
当院でも、BMI<18.5の低体重の方が4人おられました。男性が3人、女性が1人、全員骨粗鬆症がありプラリア注をしています。2人が認知症を発症し介護保険をうけていました。85歳の女性は一人暮らし、要介護3に認定されていますので、毎日ヘルパーが食事を届け、服薬を確認しています。訪問看護が毎週身体状況を確認し、わたしは月に1回訪問診療に行きます。日々の様子は「スワンネット」という新潟市医師会のICTシステムで情報を共有していますので、早め早めに手を打つことができています。またいざというときのために、近隣病院の「在宅医療バックアップシステム」に登録しており、救急搬送されることになっています。
みなさん、「改正健康増進法」により、今年の4月1日から屋内喫煙は原則禁止となりました。さらに東京都では「受動喫煙防止条例」により、飲食店での喫煙は、家族経営か無人店舗だけになりました。
https://www.bcnretail.com/market/detail/20200317_162519.html
「新型コロナ肺炎」で重症化しないためにも、是非この機会に、しっかり禁煙しましょう! 喫煙者の15%がCOPDになると言われています。