おいしくご飯をたべよう!「胃の動きのお話」
「ご飯が美味しい!」幸せな気持ちになりますよね。「快食」「快眠」「快便」は健康のバロメーター、健康の3大要素とよばれています。ふだんなにげなく食べているご飯、わたしたちの胃はどのように動いているのか?調べてみました。
胃の3つの運動機能
正常な状態の胃は、口から入った食べ物が食道を通って胃に入ってくると、胃の上部を広げて、胃の中に食べ物をたくわえようとします(貯留機能)。さらに胃は、波打つように動く蠕動(ぜんどう)運動によって食べ物と胃液を混ぜ合わせ(攪拌(かくはん)機能)、食べ物を消化して粥状にし、粥状になった食べ物を十二指腸へ送り出すはたらきを行っています(排出機能)。このように、胃には貯留、攪拌、排出という3つの運動機能があります。
https://www.astellas.com/jp/ja/diseases/fd/basicinformation-03
胃は2つの臓器からできている
第1の臓器「胃底部」「胃体部」
さてもう少し詳しく調べてみましょう。 胃の上の方にある「胃底部」「胃体部」には蠕動運動がありません。食物を受け入れ るための「受容性弛緩」と「緊張性収縮」の作用があり、伸展性に富んでいます。つまりご飯が胃に入り始めると、どんどん開いてくれるので苦しくなるまで食べることができます。空腹のときしぼんでいた胃は1~2リットルまで拡張します。そして食物は 10~20 分はそのまま胃内に停滞します(lag phase; 初期遅滞)。
第2の臓器「前庭部」
その後、微弱な収縮運動により、「前庭部」がわずかに弛緩して、食事は胃体部 から送りこまれていきます。すると G 細胞からガストリンが分泌され、「胃底部」「胃体部」から酸やペプシノゲンが分泌され、また「前庭部」は活発な蠕動運動が始まります。食事は撹拌混和され、徐々にかゆ状になります。前庭部の蠕動収縮は 2.8~3.2 回/分、規則的に起こります。そして前庭部は伸展性が低いため一定量の食物しか入らないが、直径 2~3 mm で開閉する幽門からそれ以下の大きさに消化された食物が十二指腸に排出されます。
胃が空っぽになるまで220分かかる
十二指腸では、1 分間に 3 kcal 以上の食物流入が起こると幽門の開閉を抑制し、小腸への栄養物の流入を調節します。 すなわち小腸での消化吸収に適したスピードでの胃排出の調節が行われることになります。600 kcal の食物摂取の場合、およそ 220 分で摂取食物が全量排出される(初期遅滞 10~20 分+ (600 kcal÷3 kcal/分)。胃排出が完了すると、前庭部に 10 分ほど持続する強く規則的な収縮運動がおこり、消化されなかった食物が排出されます。幽門輪より大きな非消化物はこの強い前庭部の収縮運動で十二指腸に絞り出すように排出されます(phase III )。
空腹期収縮運動(IMC)のなぞ
その後胃運動は停止し (phase I)、60~80 分の後に徐々に収縮力を増す規則的な 収縮運動(phase II)が 5 分程度続き、phase III 運動へ移 行します。 前庭部の強い収縮運動が10分ほど持続し、空腹のため「ぐ~っ」という音が鳴ります。 この一連の運動を空腹期収縮運動(inter-digestive migrating complex ; IMC)と呼び、およそ 90 分のサ イクルで繰り返します。 胃の IMC は十二指腸、空腸、回腸へと伝播し、非消化性固形物、古くなって役割を終えた脱落腸上皮の排出、 腸内細菌叢の制御を行うのです。また同時にグレリン分泌を起こし、グレリンは中枢に対 して空腹感および食欲亢進を起こし、摂食行動を促します。摂食行動が起こらなければ IMC phase I にもどり、グレリン分泌も停止します。以上は以下の論文から部分引用しました。詳細は以下をご覧ください。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/65/7/65_356/_pdf
胃の検査で異常がないのに調子が悪い「機能性ディスペプシア」
いつも胃の調子が悪い、けれど検査をしても異常ないといわれる。ストレスかな~? 以前は神経性胃炎といわれてきましたが、これは胃の運動機能の異常であり「機能性ディスペプシア」とよばれています。胃癌や胃潰瘍に比べれば、命に別状ないということで軽視されてきました。でも日常生活に支障がありますよね、なによりご飯が美味しくないし。以下の症状のある方はご相談ください。
(貯留機能の障害)食べ物が食道から胃へ入ってきても胃の上部がうまく広がらず、入ってきた食べ物を胃の中にとどめることができなくなってしまう状態を指します。これにより、早期飽満感や痛みなどが引き起こされます。
(排出機能の障害) 胃の中にある食べ物を、十二指腸へうまく送ること(排出)ができず、胃の中に食べ物が長くとどまってしまう状態を指します。これにより、胃もたれなどが引き起こされます。一方で、胃から十二指腸への排出が速くなってしまい、痛みなどの不快感が引き起こされる場合もあります。
(胃の知覚過敏)「知覚過敏」とは胃が刺激に対して痛みを感じやすくなっている状態を指します。正常であれば何も感じない程度の刺激であっても、「知覚過敏」の状態では、少量の食べ物が胃に入るだけで胃の内圧が上昇し、早期飽満感が引き起こされたり、胃酸に対して過剰に痛みや灼熱感などを感じることがあります。