あなたの悪玉コレステロール ~正確に測られてますか?
「わたしのLDLはそんなに高くないのに、どうして動脈硬化があるんですか?」 最近このような相談を受けました。そうなんです、LDLは「悪玉コレステロール」とも呼ばれており、動脈硬化のいちばんの原因といわれています。正常値は70~120であり、患者さんのLDLは120~140の間で推移していました。
LDL検査には「直接法」と「間接法」がある
検査結果をよく見ると、過去には総コレステロールの数値もあり、その時は空腹で採血したということでしたので、F式で計算してみました。すると、表示されているLDLよりも30ほど高くなるのです。実はLDLの測定には「直接法」と「間接法」があり、LDL直接測定法が発売されたのは1998年、それまではずっと計算式による「間接法」でした(HDL直接法は1995年)。
コレステロールは油ですから、そのままでは血液中に溶けることができません。そこでアポタンパク質(水と油の両方に結合できる)と結合し、リポタンパク質として血液中に存在しています。リポタンパク質は、比重の差によりおおまかに「VLDL」「LDL」「HDL」の形で存在しています。LDLは肝臓で合成され、コレステロールを全身の細胞まで運びます。HDLは血管壁にあまっているコレステロールを抜きとって肝臓まで運びます。LDLが悪玉コレステロールと呼ばれ、HDLが善玉コレステロールと呼ばれる所以です。
世界のスタンダートは「間接法」
そのLDLを測定する方法は、リポタンパク質の比重の差を利用して、超遠心法で測定します。しかし検査に手間暇がかかりますので、 従来Friedewaldの計算式(F式) がつかわれてきました。
LDL(F式)=TC(総コレステロール)-VLDL(中性脂肪÷5)-HDL
こんな簡単な計算式がみごとに超遠心法と一致するんですね。しかしこの計算式にも限界があり、①空腹時採血であること ②中性脂肪が400以下であること、という条件があります。しかし実際には中性脂肪が400以下であっても、正常値のひとと比べると誤差があります。
日本で開発された「直接法」
さてLDL直接法は、界面活性剤などを利用し、LDL以外のリポ蛋白を消去して測定します。食後でも、中性脂肪が高くても測定できるので、日本で開発されたこの方法は「特定健診」にも採用されました。一時は12社から検査試薬が発売され、日本中に広がりました。しかし超遠心法との誤差があまりにもおおきいことがわかり、日本以外の国ではつかわれなくなったのです。現在では検査精度の低い試薬は排除され、4社のみが残っています。確かにかなり精度は良くなっていますが、最大+20~-30%の誤差はあるようです。F式でもとめたLDLよりも、30%も低く出ることがあるとしたら、特定健診で正常値でも実際はもっと高いのかもしれないのです。
「直接法」と「間接法」を使い分けることが重要
そもそも検査値というのは誤差を伴うものです。またLDLに関しては、中性脂肪が正常ならF式の方が正確と思われます。しかし中性脂肪が高いときは、直接法によるLDL値も参考にしながら、自分の動脈硬化の状態と重ねながら主治医と相談するのがよいと思います。