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新潟県内18市町村が消滅の可能性?(市20→10 町6→1 村4→1)

2020/1/5
[ 地域医療を考える ]

2014年5月8日「日本創生会議」 の人口減少問題検討分科会(座長・増田寛也元総務相)の発表に日本中がショッキングをうけました。2040年、日本の市町村の50%が消滅するかもしれない! あれから5年余りが経過し、2020年が幕開けしました。 東京一極集中の是正や魅力ある地方の拠点都市づくりなどが提言されましたが、日本は変わってきたでしょうか? そして安心して子育てのできる環境づくりは進んできているでしょうか?

実は日本創生会議は自治体が消滅するといっているわけではなくて、 人口減少のために地域崩壊や自治体運営が行き詰まる懸念があることから、20~39歳の女性人口が50%以上減少する可能性のある自治体を抽出したのです。そして少子化の原因のひとつである「希望出生率」の実現を基本目標と掲げました。もちろん結婚・出産は個人の自由であり強制されるものではありません。しかし希望があってもかなえられない阻害要因がある、若者の低賃金・過重労働など(ここは書いてありませんが)を除去し、子育てのできる環境を整えていくことが重要としています。 https://leader.jp-unite.com/jinkougenshou-2/

出典元: 全国市区町村別「20~39歳女性」の将来推計人口
http://www.policycouncil.jp/pdf/prop03/prop03_2_1.pdf

さて社会問題は健康と無関係? そんなことはありません。健康寿命の延伸のためには、健康で暮らせるための社会インフラが必要です。家族構成が変化し、高齢者だけの世帯、独居が増えてきています。遠方で暮らす子供たちに頼れない、とすればご近所の支え合い、いつでも必要な介護・医療がうけられるしくみづくりが欠かせません。しかしそこへ身近な町が消えてしまったら、基本的な生活ができなくなってしまいます。2040年なんてまだ先だ、そんなことはありません。20年などあっという間です。

これまで「2025年問題」ばかりが強調されてきました。「団塊の世代」と呼ばれた戦後最大のベビーブーム世代が全員後期高齢者となります。これ以上働き盛りに高齢者の社会保障費を負担させられない、世代間の不公平を正さないと社会保障が崩壊すると、危機ばかりが煽られてきました。しかし本当にそうでしょうか? 格差は世代間にだけでなく、世代を超えて富の格差が広がっているのではないでしょうか? 社会保障というのは社会を維持するためのセーフティーネットであり、所得に応じてその費用を負担することが当然ではないでしょうか?

「2040年問題」にはもう一つの側面があります。団塊の世代のこどもたち、つまり戦後2番目のベビーブーム世代である「団塊ジュニア世代」が全員前期高齢者となるのです。高齢化率は35%を超え、高齢者数は戦後最高に達します。しかし親世代とは異なり、この世代は「就職氷河期世代」に重なります。大学を出ても仕事がない、競争社会の中で「勝ち組」「負け組」と分断され痛めつけられた世代です。やむなく非正規雇用の立場を強いられ、また心折れて働けなくなった若者も少なからずいました。生活のために親の年金を頼りにせざるをえなかったり、自分の年金や医療保険料が未納の若者もいます。今「8050問題」として注目されるようになりました。そして彼らが平均寿命に近づく頃、日本は「2060年問題」に突入します。

出典元: 令和元年版高齢社会白書
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/zenbun/pdf/1s1s_01.pdf

また2040年には、高齢者数が最高に達すると同時に死亡数も最高値となります。病院や施設で死ぬことのできない「看取り難民」は49万人と増加の一途です。彼らにどこで最期を迎えよというのでしょう? 資料作成時期から10年余りが経過し、居宅で自立した生活を送ることが困難になった高齢者の居場所として、民間の居宅型施設が増えてきました。サ高住、グループホーム、有料老人ホーム、小規模多機能施設などです。しかしそれでも不十分であり、医療依存度の高い高齢者はショートステイの長期利用により施設入所まで待機しているのが現状です。しかしこれらの施設には医療機能がほとんどないのです。ショートステイへの訪問診療は許可されていませんし、グループホームへは訪問看護が許可されていません。

出典元: 平成30年版高齢社会白書
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_1_1.html
https://carepro.co.jp/recruit-zaitaku/mission

わたしも可能な限り自宅で暮らしたいものだと考えています。しかし個人差はあるのでしょうが、還暦を過ぎてからめっきりと体力が低下し、認知機能も衰え、職員に支えられながら、なんとか仕事を継続している状況です。いつまで続けられるかはわかりませんが、地域の中でだれもが安心して必要な医療や介護が受けられるように、病院や診療所の先生方、介護福祉の専門家・事業所、行政や社協、地域の自治会のみなさんと連携し、「さかいわ健康友の会」のみなさんといっしょに、「架け橋」としての役割を果たしていきたい、少しでもお役に立てることがあれば幸い、そのように考えています。本年もよろしくお願いいたします。

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