確かさがうすらいでいく しかし自分は確かにここにいる
1月11日のNHKスペシャルです。認知症研究の第一人者が認知症となり、自ら認知症のひとの心の中を語りました。そして家族の苦悩、どう受け止めてよいのか、悩み葛藤する中で、病人である夫の、父の心の中が見えてきます。多くの方に見ていただきたい番組です。 https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=2020
介護が必要となる原因―1位「認知症」
2018年の平均寿命は男性81.25歳、女性87.32歳、誰もが長寿を迎えることができる可能性がある、そういう時代を迎えています。死亡原因の1位は悪性腫瘍、2位心疾患、3位老衰、4位脳卒中、5位肺炎、と変わりました。 しかし心身の衰え、老化を避けることはできません。 なんらかの介護が必要とされる期間があり、その原因の1位は認知症です。明日は我が身、だれもが認知症になる可能性があるのです。
自分の心の中から「確かさ」がうすらいでいく
歳をとれば、程度の差こそあれ、もの忘れは増えてきます。しかし加齢によるもの忘れと、認知症のもの忘れは決定的に異なります。進行が速く、生活機能が失われていくからです。しかし初期の段階では、歳のせいなのか病気なのか区別がつかないため、家族が気づいたときには進行していることが少なくありません。専門医へ受診させようと思っても、本人が拒否することもあります。その間に進行し生活機能が失われ、介護なしには生活ができなくなります。家族は本人を説得し、なんとか病院へ連れてきます。そのため認知症は、家族の言葉で語られることが多いのです。
長谷川医師は自分の心の内を語りました。自分の心の中から「確かさ」がうすらいでいく、不安、自分はどこにいるのか、これからなにをしようとしているのか…… しかし長年過ごしてきた自分の家、仕事をしてきた書斎、そして妻の弾くピアノの音、認知症が進んでも唯一変わらない家族との風景、ここにいれば安心できる…… しかし何度も同じ話を繰り返し、記憶違いの話にこだわり、夢と現実の区別がつかなくなる。家族の負担は限界となり、デイサービスやショートステイを利用、家族のためには仕方がない、しかしここでは独りだ、帰りたい……
長寿社会では、だれもが「認知症」になるかもしれない
一部の認知症を除いて、今の医学では認知症を治すことはできません。ゆっくりではあっても必ず進行します。また認知症の有病率は高く、平均寿命まで生きられれば男性の20%、女性の40%が認知症に、95歳をこえると80%が認知症に罹患します。だれもが、認知症になれる、認知症が発症するほど長寿できるようになったと考えることもできます。
若年性アルツハイマー病をのぞけば、ほとんどのアルツハイマー病は加齢による脳の変化であり、若いころの生活習慣と関係があると言われています。もちろん予防に努力することにこしたことはありません。しかし歳をとることは避けられませんから、やはり認知症になる可能性を受け入れざるを得ません。自分が認知症になったとき、どのように生きていきたいか、家族に過剰な負担をかけずに、しかし最期まで自分らしく生きていくことのできる社会に、わたしたちは準備していかねばなりません。