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あわや脳梗塞! 原因は「中性脂肪」だった

2021/9/22
[ 脂質異常症 ]

昨年7月にご紹介した患者さんの1年後です。https://www.niigata-min-sakaiwa.com/zakki/2593 今年の頸動脈エコーでは、さらに動脈硬化が進んでいました。直径6㎜ほどの内頚動脈は狭窄し、すき間はわずか1.3㎜しかありません。あわてて脳外科に紹介しました。昨年までは経過観察の指示だったのですが、内頚動脈から先の脳動脈血流が弱くなっている、このままでは詰まってしまう、血管治療が必要という指示が出ました。

*右内頚動脈エコー 黒色が血液、白い塊が動脈硬化プラークです。
直径6㎜ほどの血管の内腔が極めて狭くなっていくのがわかります。

右大腿動脈からカテーテルを挿入し、右総頚動脈の入り口から造影剤を注入しました。ところがまったく造影剤が流れていかない、右内頚動脈の入り口が詰まっている、そこでわずかなすき間をさがし、ガイドワイヤーで探っていく、詰まりかけた血栓をくだき、造影剤が脳に向かって流れだしました。頸動脈ステントを留置し、患者さんは脳梗塞寸前で救われました。

*右の画像は拡大されていますが、網のように映っている筒状のものがステントです。

LDLが正常でも、動脈硬化の進行を止められなかった!

昨年のブログに書きましたように、LDL(悪玉コレステロール)は、130➡70mg/dlまで下げました。体重も、75➡69kgまで減らしてくれました。HbA1cも5.6%まで下がっています。それでも動脈硬化が進行した。結局、血液検査で最後まで異常値だったのは「肝機能」「中性脂肪」でした、それもわずかな上昇でした。でもそのわずかな異常が動脈硬化を進行させたのです。

同じLDLでも、中性脂肪が高いほど動脈硬化が進行する

新潟大学内分泌代謝内科曽根教授にいただいた研究資料です。同じLDL(悪玉コレステロール)値であっても、中性脂肪が高いほど動脈硬化が強くなることが証明されています。空腹時中性脂肪値が82mg/dlを超えると、その影響が出てくるのです。これまで中性脂肪の正常値は150と思い込んでいましたから、とんでもないことだったのです。メタボの患者さんの場合は、100未満まで下げなければいけなかったのです。

真犯人は、超悪玉コレステロール(small dense LDL)

中性脂肪が高いと、LDLコレステロールが小型になります。小型ですから、血管内皮細胞から血管壁に侵入しやすく、さらに酸化されやすいのです。酸化された「sdLDL」はどんどんマクロファージに食べられて、プラークが大きくなっていきます。LDLが多少高くても、酸化がゆっくりであれば、プラークはこれほど急速には大きくはならないのです。

出典元:https://yurakubashi.com/blog/677

中性脂肪が恐いもう一つの理由 レムナント(RLP-C)

また肝臓ではVLDL(コレステロールと中性脂肪を含む)がつくられますが、血液中で中性脂肪が分解されると、あっという間にLDL(コレステロールが多い)に変わります。LDLはコレステロールを体中の細胞に運び、あまったコレステロールはHDLが回収します。ところがメタボがあると、中性脂肪の分解が遅くなります。LDLになれなかったVLDLの残り屑は「レムナント」と呼ばれ、あっという間に酸化されて、マクロファージに食べられてしまいます。動脈硬化のリスクの高い方は、中性脂肪もしっかりと正常化させましょう!

コメント

  • こういち より:

    こういちと申します。よろしくお願いいたします
    この度、頸動脈エコー検査を受け更にMRI検査を受けましたがその結果を医師は具体的な説明をしてくれませんでした、次回約1年後に再検査を受けるよう指示されましたが何か引っかかります
    そこで拙速ですがセカンドオピニオン制度を利用するか又その医師に再度説明を求めるかで悩んでいます。アドバイスをよろしくねがいます

    • 坂井輪診療所 より:

      不安なお気持ち、お察しいたします。まずセカンドオピニオンですが、前医の検査資料などを持参されないと、つまり判断材料がないと難しいです。そこで前医に資料提供を求める必要がありますが、通常拒否されることはないはずです。ところで前医の方針から想像しますと、頸動脈の狭窄は軽度であり「脳血管ステント留置」の適応はないという判断だと思われます。その場合、定期検査ということになりますが、まずなによりも動脈硬化に至った原因に対して徹底的に予防治療を行うことが大切です。つまり生活習慣の改善、それでも脂質検査値や血糖値など、動脈硬化の原因となる数値の改善が得られなければ薬物治療が必要となります。そのあたりのことについて、前医に再度の説明を求めるのが良いのではないかと思います。それで納得がいかないようなら、脳血管ステント治療を行っている脳外科施設に紹介してもらってはいかがでしょう。この場合は、セカンドオピニオンではなく、保険診療となると思われます。

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