飲み込みのしくみ~誤嚥性肺炎の予防のために
令和元年の統計では、死因の3位が老衰になり、肺炎による死亡は減ったのかな?と思われていませんか? そうではありません、実は、平成29年から死因統計に誤嚥性肺炎が追加されたのです。ですので、第5位の肺炎と、第6位の誤嚥性肺炎をあわせれば、老衰を抜いて第3位となります。またそもそも肺炎死のほとんどは高齢者であり、そのほとんどは誤嚥が原因といわれています。また老衰の過程で誤嚥を伴うことが多く、徐々に食べられなくなり、老衰と診断されることが少なくありません。つまり肺炎(誤嚥性肺炎)は高齢者の死因として重要な位置を占めています。
喉頭蓋 気管の入り口にふたをして誤嚥を防いでいる
頭の横断面の絵を見ますと、舌の付け根に青くふたのようなものがありますよね。ふだんはふたはあいていて、息が気管に出入りします。のどの入り口はしまっています。食事を飲み込むときには、ふたがビヨーンと下を向き気管の入り口を閉めてくれる。そしてのどの入り口が開いて、食道にごはんが入っていきます。大変うまくできてますが、ふた(喉頭蓋)は自分の意志では動かせませんよね?どうやって動いているのか、不思議ではありませんか?
喉頭蓋は自分では動けない
のどの骨をみるとよくわかります。喉頭蓋の付け根は甲状軟骨(喉ぼとけ)の上縁に付着しています。咽頭筋の収縮により、舌骨と甲状軟骨が上方に引っ張られます。すると上を向いていた喉頭蓋が水平方向に倒れます。食事が入ってくると、その重さのために披裂軟骨のところで先っちょが折れ曲がり、完全にふたをしてできあがりというわけです。これができる理由は、喉頭蓋には弾力と復元力があり、折れ曲がりのくりかえしに耐える「弾性軟骨」でできているからです。
高齢者に多い「不顕性誤嚥」
若い人でも、睡眠中に唾液の誤嚥を起こしているといわれています。しかし微量であれば咳き込みもなく、肺炎にいたることもありません。ところが高齢者ではそうはいきません。加齢とともに飲み込みが悪くなりますので、誤嚥の量が増えます。口腔内にはさまざまな雑菌が繁殖しますので、日々の口腔ケアが大切です。また「不顕性誤嚥」といって、誤嚥してるのに咳き込まなくなる、こうなると大変です。咳き込むことで、誤嚥した雑菌を吐き出そうとしているわけですから。咳すらしていないのに、熱もないのに、肺炎?高齢者ではよくあることです。
誤嚥予防のためにできること
日々の口腔ケアについては、厚労省のサイトなどをご覧ください。清潔保持だけでなく乾燥予防、唾液腺マッサージも有効です。https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-08-003.html また栄養管理、運動、喉の筋肉を鍛える(パタカラ体操など)ことも重要です。ふだんから親しい友人といっぱいおしゃべりをして、喉と脳を活性化するとよいですね。カラオケもお勧めです(感染対策をしっかりと)。
詳細は、以下の書籍なども参考にされてください。嚥下機能検査と治療、また食事のときの体位、嚥下障害がある場合の、とろみ水やゼリーのつくりかたなど、わたしの苦手分野がくわしく書かれていました。
コメントはありません。