新潟市の救急医療はどうなるのか?
みなさん、いざというときの命の綱は救急車ですよね。ご存じの方も多いと思いますが、119番にかけると、救急車は9分前後で到着します。しかしそこからが長い、いつまでたっても発車しない。そうなんです、行き先が決まらないからです。消防署に電話をかけてから救急車が自宅に到着するまでの時間を「現場到着時間」、電話をかけてから病院に搬送されるまでの時間を「医療機関等収容所要時間」といいます。その差を「現場滞在時間」といいますが、新潟市では、すでに30分越えの36.3分、そこで受け入れ病院問い合わせ回数が4回以上になると「救急搬送困難事案」ということになります。昨年お盆前の一週間には13件と報道されました(新潟日報)
高齢化が進むと、さらに救急需要が増えるのでしょうか?
新潟市消防局によると、救急搬送人数が31000人(2020年)から39000人(2040年)に増加すると推計されています。つまり約8000人の搬送者が増加すると見込まれています。現在新潟市民病院に年間6000人、新潟大学病院に3000人搬送されていますが、すでに限界に達しています。すると今後増加する8000人の患者さんを搬送する病院がない、すなわち「救急難民」になってしまう危険があります。
そこで新潟県は、高度急性期医療を担う「新しい救急拠点」を設置することに決定し、公募することとしました。その結果、西区にある「済生会新潟病院」「新潟医療センター」が手上げをしました。しかし現地建て替えなのか?移転なのか?わかりませんが、現時点で受け入れている救急患者数を3~4倍に引き上げなくてはなりません。新潟市民病院の規模を上回る病院を建設したとして、どうやってそれに見合う医師を集めるのでしょう?やるしかないが結論であるとしても、医師偏在指標が全国でワースト2位の新潟県で実現することは極めて難題であると思います。
医療需要・介護需要の増加は予測を上回っていた
「2025年問題」戦後第一次ベビーブーム(団塊の世代)がすべて後期高齢者となり、医療・介護需要がピークに達する、それまでに「地域包括ケアシステム」を構築するというのが、厚生労働省の方針でした。しかし現実は予測を上回り、西区でみるならば、人口減少とともに医療需要は2030年で頭打ちとなるものの、介護需要は2040年を超えて増加の一途をたどります。
「2040年問題」第二次ベビーブーム世代(団塊ジュニア)がすべて前期高齢者となります。しかしこの世代は、単に人口が多いだけではありません。大学卒業前にバブルが崩壊し、その後長い就職氷河期に突入します。正社員になれないままワーキングプアが生まれ、その後労働者派遣法が改正され、非正規雇用労働者が一気に増加しました。失われた20年は中高年引きこもりも増加させ、日本社会はかつてない格差社会に突入しました。その中には無保険者もおり、親の年金に頼らざるを得ない世代、現在の「8050問題」に連なります。その世代が高齢者となる時代を迎えるのです。
「高度救急」と「一般救急」の役割分担と「高齢者救急」
ICUで集中治療を必要とする広範囲熱傷、多発外傷、あるいは生命にかかわる脳心血管疾患などは、高齢者であっても適応があれば「高度救命救急センター」で治療を受けるべきです。しかし高齢者にありふれた誤嚥性肺炎や心不全、脱水、その他の一般救急は「地域の一般病院」で治療できるのがのぞましい。また高度急性期病院での治療が終えたなら、地域の病院に転院して退院支援を開始するのがのぞましい。高齢者が元の生活にもどるためには、地域の受け皿である「地域包括ケアシステム」と協働して、退院支援と多職種連携をつなぐ必要があるからです。
わたしは、長年「地域完結型医療連携システム」構築の必要性を感じてきました。それなくしては「地域包括ケアシステム」は機能しないのです。その上で、介護、福祉、生活支援など、多職種が連携して患者さんと家族をささえるしくみを構築していかねばなりません。2025年まであと2年、もうゆっくりはしていられません、まったなしです。
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